妊娠・出産・産後に関するお役立ち情報は、特に2012年に書いたものが多いため、古くなってくるものもあります。
あくまでご自身のリサーチの出発点として受け取って頂けると幸いです。

2012年4月3日火曜日

ゲスト寄稿No.3 今井あゆみさん〜帝王切開考 その2: 帝王切開の安全性〜


引き続き、看護助産師(Certified Nurse Midwife)/女性専門ナースプラクティショナー(Women's Health Nurse Practitioner)である今井あゆみさんが、2011年8月20日に「わいわいママ!」(サンフランシスコの妊娠・出産・育児サポートグループ)のブログで掲載された記事の再掲載です。

◆◇◆◇◆


前回の帝王切開考 その1:最近の動向」に続き、今回は帝王切開の安全性についてのお話です。

帝王切開を含め、現代の外科処置や手術は100年前の医療技術なら亡くなっていた何千何万何億という命を救ってきました。まさにライフセーバーとしての帝王切開術は人類が築き上げてきた科学の進歩の象徴ともいえます。しかし、身体にメスを入れるその手術には、さまざまなリスクがあります。

まず赤ちゃんへの影響ですが、帝王切開で生まれた赤ちゃんは自然に経膣分娩で産まれた赤ちゃんに比べ、圧倒的に罹患率や死亡率が高いのが現実です。(これは、緊急に行われるリスクの高い帝王切開を除いて比較されたデーターによる結果です)。

その主な原因は、赤ちゃんの呼吸器疾患、特に肺高血圧症(自然分娩の4倍)や生まれてすぐに起こる一過性の呼吸障害などです。自然に生まれて来る赤ちゃんは、お母さんの狭い産道を通る間に胸を圧迫され、肺の中の羊水が搾り出されるような形で排出され第一呼吸に備えることができますが、帝王切開で取り出された赤ちゃんの肺は羊水が排出されにくいようです。

長い陣痛と子宮の収縮というストレスに耐えて産まれてくる赤ちゃん達の身体にはストレスホルモンが作られますが、このホルモンがお母さんの身体から生まれ出た時に受ける寒冷刺激などと相まって、最初の呼吸を促す重要な役割をになっています。自然の仕組みとは、本当にうまく、そして無駄なくできていると思いませんか? 

それから、子宮を切開する時に赤ちゃんの身体の一部を切ってしまう・・・ということもあり得ます。その率は、たとえば逆子の場合などは6%・・・、以外に高くありませんかね、これ・・・。

お母さんの方はと言うと、2003年に比較されたデーターを見てみますと、母体の死亡率は10万件あたり帝王切開による死亡率は36件、その一方で経膣分娩の場合は9件でした。

帝王切開によって起こる合併症は、術中および術後の多量出血、術後の感染症、肺塞栓(血管内にできた血の塊が肺などの大きな血管に詰まって起こる)、それに手術そのものによって膀胱などの周辺臓器が傷つけられる・・・といったものです。

さらに、上記に書いたように帝王切開で生まれた赤ちゃんのリスクが高いために、アメリカの多くの病院では術後赤ちゃんは新生児室で管理され、お母さんはリカバリールームで状態が安定するまで過ごすことが多いのですが、この為産まれてすぐに赤ちゃんと過ごせないことによるストレスや、哺乳開始が遅れるなどの影響もあるといわれます。

最近、帝王切開でも状態が安定していたら、手術直後から母子を一緒にしよう・・・という病院が増えてきました。いいことだと思います。

さらに、将来の妊娠に及ぼす影響も無視できません。帝王切開後、自然分娩後に比べるとわずかですが流産する率が高くなります。また胎盤の定着異常を起こすこともあります。子宮破裂の危険性は、帝王切開の数に比例して高くなっていきます。

「下から産むと、年が行った時に緩んじゃうのよね」という世間のうわさは本当でしょうか? 50歳以上の尿失禁に悩む患者さんに行われた調査によると、経膣で産んだ人も帝王切開で産んだ人も、尿失禁をわずらう率には差がなかったそうです。むしろ、何人産んでいるかや、家族性の遺伝による傾向などが尿失禁と大きく関わっていることがわかりました。

で、怖いことばっかり書きましたが、私は帝王切開反対派ではありません。念のため・・・。むしろ、産科医の助手として一緒に手術に臨みますが、ほとんどの帝王切開は優れた医療技術と病院のスタッフのチームワークで何事もなく終わります。そして、帝王切開という手段をライフセーバーとして、大切に思っています。

どんな生まれ方にせよ、子供たちが、そしてその家族が無事人生の一歩を笑顔で踏み出せるならそれで良いと思います。ただ、安易で楽チンだからという理由で帝王切開を選ぶのは、(それもアメリカ的にいえば個人の選択なのかもしれませんが)、もう一度こうした手術によるリスクも良く考えたうえで選択して欲しいと思います。

ワイワイでも帝王切開で元気に生まれた子供たちが一杯います。皆元気に育っています。

お母さん達はみな、大変な状況を経てがんばって帝王切開で出産されました。沢山のリスクをくぐり抜け元気に生まれて来てくれた子供達、それに文字通り命がけで手術に挑んだお母さん達に心から拍手を送りたいと思います。



〜今井あゆみさんのプロフィール〜

京都大学医療短期大学部助産特別専攻科を卒業の後、日本で助産師として10近く働き1220人の赤ちゃんを取り上げる。2000年にサンフランシスコに移り住み、サンフランシスコ州立大学でホリスティック医療を学びながら、カリフォルニアのRN資格を取得。サンフランシスコ市内の病院で、産科分娩部、新生児室、マタニティーフロア、ハイリスク妊娠検査室などでチャージナースとして約7年間勤務。2011年にUniversity of California San Franciscoの修士課程を卒業、カリフォルニア州公認看護助産師・女性専門ナースプラクティショナーとなる。


◆◇◆◇◆


今井あゆみさんの帝王切開考を2回にわたって再掲載させて頂きました。帝王切開を避けるためにできること(←4/8 リンク追加しました)、帝王切開になった時にパートナーができることをポジティブな経験にするためにできること(←4/26 リンク追加しました)、ベイエリアでVBAC(Vaginal Birth After Cesarean)をする医療プロバイダーなどについては、今度はドゥーラの観点からとなりますが、また投稿してみたいと思っています。



◇◆◇◆◇
ブログランキングに参加しています。
一日一回クリックをお願いします!
にほんブログ村 マタニティーブログ 海外出産へ

0 件のコメント:

コメントを投稿